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事務局より

清水真哉

<コンパクトな国に>

 前号の「デフレ・景気・経済成長 安倍政権の誤れる経済政策」で書き残したことを書かせて頂きたい。
 中国の経済成長はまだまだ先が長いであろう。人件費は上昇し、元高も経験するであろうが、それも克服して成長を続けるであろう。
 日本は今、リージョナルジェットと呼ばれる中小型飛行機の分野に再び活路を求めようと奮戦している訳であるが、いずれ中国は大型ジェット機を自国メーカーの製品として国内生産するようになり、ボーイングとエアバスの二社体制に割って入るであろう。中国には十分な国内需要があるのだからこれは可能である。これが中国の経済発展の行き着く一つの目安となるであろう。
 中国が政治的にも経済的にも巨大な世界一の超大国になっていく一方、日本はその周辺に位置する人口7000万規模の地域的な大国という位置づけに変わっていくであろう。
 そして、日本人と世界の他の国の人々との生活水準は均一化していくであろう。
 世界経済が進んで行っている方向をまさに示しているキーワードが、ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正会長兼社長の語る「世界同一賃金」という言葉である。仕事の内容が同じであれば世界のどこであれ同じ賃金を払うのはグローバル企業の帰結である、とこの経営者は語る。「年収百万円も仕方ない」とも語っている。柳井社長を批判する声も聞こえるが、世界の賃金の平準化は、良い悪いを超えて世界の進んでいる現実なのである。物価も、労働条件も、福祉水準も同様に、時間は掛かってもいずれ同じ方向に向かっていくであろう。これがグローバリゼーションの行き着く先である。
 日本人が豊かさを少しでも維持したければ、労働力頼みでない何かがあって欲しいというのは自然な願望である。
 日本が有する世界的に希少性のある資源として水産物がある。日本の海域は世界的に見ても良好な漁場である。ところが日本の資源管理のあり方は極めて後進的で少なからぬ魚種で資源量を減らしてしまっている。すべての魚種の漁獲量の漁船ごとの割当制度を導入することにより資源量を管理し、資源の量と質を低下させることなく、漁業を輸出もできる日本の主要産業へと体質改善すべきなのである。(参考:片野歩『日本の水産業は復活できる! 水産資源争奪戦をどう闘うか』日本経済新聞出版社)
 目下のところ、アメリカの景気が回復し、それに引っ張られる形で日本の景気も回復しつつある。日本の景気回復は安倍政権の政策によるものではない。景気はそもそも循環するものであり、世界的に景気の上昇局面に入ってきたというだけのことである。
 景気は回復しつつあるのだから、政府は景気対策ではなく、財政再建に舵を切り替えるべきである。国民はデフレで苦しんでいると総理は考えているのかも知れないが、日本人の所得の減少、生活水準の低下は歴史の必然であり、甘受せざるを得ない。それに国家予算で虚しく抵抗しようとすれば、国家財政はますます危機的となるであろう。
 国土強靭化などと、これまで以上に国土を鉄とコンクリートで固める政策を自民党は打ち出しているが、道路や堤防ばかり造れば、国土が強靭化するのに反比例して財政は脆弱化していくであろう。
 日本の収入が減り、国にも地方にも国民にも金がないという状態になることを見越し、お金がなくとも何とか暮らしていけるための社会インフラを設計すべきである。
 自家用車がなくても暮らせるコンパクトな町づくりはこうした観点からも必須の課題である。簡素でも低廉な住宅に住めて、歩いて買い物でき、役所や病院など必要なところには公共交通で行ければ、所得が低くても生活はし易かろう。
 日本の将来の人口と国力で維持しえる社会インフラの量は限られ、道路や橋やダムなど、これから新設するは愚か、今あるものも適正規模に間引いていく他ないであろう。
 住宅も同様である。今、周囲に危険となっている個人の家屋を、自治体が公費で解体せざるを得ないという事態に直面し始めているが、民間が建設しているタワーマンションなども、最終的な解体に至るまでの長期的な修繕を居住者だけの負担で万全にやっていけるのか不安がある。いずれ将来の国民に負の遺産として、のしかかってくるのではなかろうか。
 また、既存のインフラの管理を厳格に行っていくことも重要である。最近、老朽化という言葉で語られている橋梁、トンネルなどの多くは、実際は老朽化というよりも、管理の手抜きと言わざるを得ないものが多いようである。
 日本の国家財政が近い将来に破綻することは確実と思われるが、それを少しでも先延ばしにし、その衝撃が少しでも穏やかなものになるように、今から国や地方のあり方を引き締まったものにする努力を始めてもらいたいものである。