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私のみたヨーロッパ(その3) 杉田久美子


ドイツとの国境に近いストラスブールはトラムの先進都市。その導入は推進派の市長の選出があったからこそ、実現できたそうです。(この都市はドイツとフランス間の抗争に巻き込まれた悲劇の歴史や、オーストリア皇女だったマリー・アントワネットがフランス王妃としてお輿入れする時に中継地になった歴史も持っています。温泉地のバーデンバーデンからパリ行きの鉄道に乗って、降り立ったストラスブール駅舎は古びて灰色かかって汚く見えましたが、よく見るとステンドグラスや石造彫刻が立派で歴史を背負った重みを感じました。)

ストラスブールのトラムの魅力の第一はデザイン性
夕暮れから大聖堂(世界遺産)のある中心街に向いました。と、突然、トラムが、薄暗くなった街中から「カアー」と光を放つように目に飛び込んできました。写真やビデオで昼間の姿は見慣れていましたが夜の姿は初めてでしだ。大きな窓から明るい車内と乗客がくっきりと浮かび上がり、連続した飾り窓の絵のように幻想的でした。斬新なデザインの夜の効果に3人で感嘆の声を上げました。
このトラムは「見ても素敵、乗っても素敵」、「昼も素敵、夜も素敵」だった。チューリップを連想するハート型のつかまり棒も可愛い。大きな窓から、街の景色や歩道を歩く人々を全身見ることができます。視線の位置が余り変わらないからこそ一体感や近親感が湧きます。人間の歩く姿や街のにぎわいを見ることがこんなにも自分の気持ちを高揚させるものかと驚きました。
夫達はドアの開閉がスムースでなかったり、車輪の振動が座席に響いたり、エアコンの音が騒々しかったり、減速・加速の度に乗客に負荷がかかるなど技術面では大いに気になると談義していました。これらの技術は日本の方が優れているに違いありません。

もう一つの魅力はネットワークのシステム性
このトラムはユニバーサルデザインの低床車両、車に邪魔されずに走行できる優先軌道と優先信号、消音対策の芝生軌道(写真1)、乗降時の時間のロス対策の券売機とチケットキャンセラーなど、日本ではまだ、採用されていない対策が当たり前のようにされていました。
でも、私が一番驚いたのは、パーク&ライド(郊外から車できて、トラムに乗り換えて中心街に入る)、バス&ライド(同じくバスできてトラムに乗り換える)、サイクル&ライド(同じく自転車できてトラムに乗り換える)のネットワーク・システムの広がりでした。
郊外の大学までトラムで行きますと、そこがバス&ライドになっていて(写真2)、トラムから降りて、その途中にはパーク&ライド用の駐車場も所々にありました。又、中心部の2路線が交差している「鉄の駅」(写真3)のすぐ近くには簡素ながら、駐輪施設(写真4)を見つけました。

中央駅ではトラムは地下に入る
ストラスブール駅前は大きな広場なのに殺風景で、その先の道路はクルマがビュンビュンと走っていました。次の日にわかったのですが、トラムは駅の地下に入っていたのです。オランダのアムステルダムのように地上からトラムに乗れる方が分かりやすくて、断然便利です。人間の生理にも合っていると思いました。その選択肢があったのか、なぜ地下に入れたのか、その経緯がどうであれ、地下に入れてしまったことに私は落胆しました。

パリにこそトラムを!
最後にストラスブールからパリに行きました。パリにもトラムが1路線走っていますが、今回は試乗しませんでした。観光のため、乗り降り自由の2階建てバスの一日乗車券を買って乗ってみましたが、大変な渋滞に巻き込まれたのです。歩く方がまだ早い位で、降りたところで次のバスも当てになりません。20ユーロ(約3,000円)はドブに捨て、歩くことにしました。日本の若い女性がレンタ・サイクルで走るのも見かけました。これは私には危険すぎます。街並みを楽しみ、人々に紛れ込んでこそ、旅の醍醐味があります。そのツールとして、「パリにもトラムが似合うのに・・・」と思いながら、パリからアムステルダム経由で帰国しました。